あなたは、タフな悪漢か、タフな善人のどちらかになるべきだったのよ——大江健三郎『個人的な体験』 : 思索の森と空の群青

自分が大学に入った年に書かれたエントリだけど、ひそやかにコメントしてみます。

大江『個人的な体験』184頁の記述は、自分に重ねながら最後まで読んでいくとすごく嫌な気分におそわれて、絶望感にかられたものだけれど、実はその前でうっ屈した心を晴らしてくれるようなことに鳥(バード)自身がちゃんとふれているんだなあと。すべての体験が「個人的な体験」とはいえないのかもしれないけど、でも「個人的な体験」には出口が無いのかというと、それもちがう(と考えられる)ということを、この作品は示してくれたし、その実感が今自分が生きる際の根本のエネルギーを供給しつづけてくれています。

それだけです。読むたびに、素晴らしいエントリだと思います。